シュリー・クリシュナ

シュリー・クリシュナアルジュナの戦ったこの戦争は欲望との戦いを象徴している。私たちが臨むこの感覚との戦いも、神に結果を捧げることでその束縛から逃れ、永遠不滅の境地に達することができるのである。

無執着を説く勇ましいクリシュナとは対照的に、青年期の牧童クリシュナの物語は甘く激しい恋の物語である。彼の奏でる魅惑的な笛の音に誘われて、女たちは皆取る物も取りあえず、密会の場所ヴリンダーヴァナの林へと急ぐ。その中に牛飼いの娘ラーダーの姿があった。ラーダーがクリシュナに抱く愛、それは魂から神に向けられた無条件の愛を表している。ただ愛ゆえに愛し、すべてがその愛のうちに忘れ去られる。熱情は高まり、もはや何ものにも神以外を見ることはできない。魂があげるその狂乱の叫びに、愛なる神は応えざるを得ない。ラーダーを探してクリシュナは必死の思いで林を駆け回り、彼女を見つけると優しく抱きとめた。

世間での快楽や義務、自らの傲慢も正気も脱ぎ捨てて裸となった魂を、神は自ら抱き上げに駆け寄るのだ。二つは溶け合い、ただ一つの愛の中で永遠に結ばれる。他には何もない。他に何を求めよう。尽きることのない至福の歓喜のうちに、神も人も一つとなる愛の真実がある。

(絵:ダヤーマティー)