愛の真理

ある男が死んで黄泉の国に行きました。ところが死神の台帳にはまだ彼の名前が登録されておらず、この世に戻されることになります。彼は、どうせそのうち来るのだから黄泉の国とやらを見て帰ろう、と一つの館に入ります。

そこでは大勢の人間どもが食卓を囲み食事をするところでした。よく見ると彼らの片腕は椅子のひじ掛けに結わえ付けられていて、もう一方の手には長い柄のスプーンがくくり付けられている。彼らは目の前のご馳走を食べようとするのだが、口に運べず、頭にかぶるやら床に落とすやらで、苛立ち怒りだし、とうとう喧嘩を始めた。彼は、これは地獄だと思って次の館に入ります。

ここでも多くの人間たちが同じように片手を椅子に、片手に長いスプーンをくくり付けられて食事をするところだった。すると彼らは長いスプーンで相手の口に食べものを運んでいる。もらった者はお返しをする、という具合で皆満足気に喜んでいる。彼は、ここは天国だと思った。

そう、天国と地獄は人の心の中にあります。あなたが「私」と「私のもの」を突っ張ればそこは地獄になり、「あなた」と「あなたのもの」に自らを捧げるなら天国になるのです。心は迷いやすく間違いを犯すかもしれないが、自らの苦しみを避けるためには他者を苦しめてはならない。自らの幸いを招くためには他者の喜びに奉仕することです。それは愛です。