働きの秘訣を体感する


私は鍼灸師として働いています。
患者さんの症状や困っていることを伺い、少しでも改善に向かうように治療をするのが仕事です。
患者さんによって症状は異なり、症状の表現方法も異なります。日々患者さんの言葉に真剣に耳を傾け、丁寧な施術を行うよう心がけているものの、一筋縄ではいかない場合もあります。

先日、私が苦手意識を持っている患者さんが来られました。この方は症状を次から次へと訴え、治療のやり方に対してもいろいろと注文をしてきます。また痛みに敏感で、ツボの位置を確認するためにそっと触るだけでも大騒ぎすることがあり、他の患者さん以上に慎重に治療を進める必要がありました。この患者さんに振り回されないよう、落ち着いて対応するように努めていますが、治療後はどっと疲れが出ることが多く、予約が入るだけで憂鬱な気持ちになってしまうこともありました。
今回は忙しい時に急に連絡がきたこともあり、いつも以上に憂鬱な気分になってしまいました。
またいろいろ言われるのかなぁ?今回も大騒ぎするかも?とにかく振り回されないようにしないと!…これまでの記憶が次々と頭の中に出てきて、心の中にネガティブな思いが湧いてきます。すぐにそれを振り払うように意識を切り替えますが、気づくとまた湧いてきて、それを振り払う…諦めずに何度も繰り返しました。
すると記憶が浮かばないようになり、憂鬱な思いも消えていきました。同時に「すべての存在は等しく尊い」という言葉が頭に浮かび、心の中で繰り返し唱えながら患者さんを待ちました。
いよいよ患者さんが到着。いつも通り症状を次々と訴えてくるので、それを頭の中で整理しながらどう治療していくかを考えます。
前回の治療の際に痛みに対してより敏感だったことを思い出し、普段より細めの鍼を使うことにしました。また、治療後にだるさを感じたのを気にされていたので、なるべくだるくならないようにツボの組み合わせを工夫することにして、治療開始。(※鍼灸治療においては、心身ともに疲労しすぎている時、精神状態が不安定な時、食べ過ぎの時、睡眠不足の時などに、痛みに敏感になると考えます。また治療後に多少のだるさや眠気が出ることがあります。)
いつもだったらもう何かしら注文がきているはずなのに、今回は何も言ってこないことに気づきましたが、気にせず治療を続けました。

しばらくすると、「今日は全然痛くない。なんでだろう?」と患者さんが言いました。私は、「前回来られた時に痛みに敏感だったようなので、今日はいつもより細い鍼に変えたからかもしれませんね。」と答えました。すると患者さんから、「だから痛くないのか。気遣ってくれてありがとう。」との言葉が。
今までにない展開に驚くとともに、胸の中が清々しさでいっぱいになりました。状況としては嬉しかったはずなのですが、不思議と嬉しいという思いはなく、ただ清々しさだけがありました。こんな気持ちでこの患者さんを治療したのは初めてでした。
治療後にだるさを感じることなく、穏やかな笑顔で患者さんは帰られました。清々しい気持ちはまだ続いていました。
今日はこれまでと何が違っていたのだろう。あんなに苦手だったなずなのに、今日は苦手意識を微塵も感じなかった。患者さんの機嫌がこれまでで一番良かったのかもしれないけれど、それだけではなく、私自身が変われたことが大きいのかもしれないと思いました。
仕事が終わった後、以前参加した講座「誰もが実践できるヨーガ」の、「働きの秘訣」の回のレジュメを久しぶりに読み返してみました。
ヨーガでは働きの目的は「働きを通して心を調えていく」ことと考え、心が調えられるとどんな仕事も快活によい働きができるようになり、自分の欲望のためではなく他者の喜びのために働くようになっていく、と書いてありました。

働きの秘訣として、
①心身を常に快適に調える
②目の前のことに集中する
③他者との調和を大切にする
この3つが大事だということも教わりました。
(※①はアーサナや瞑想を日々実践することが必須)

今回の私の場合、
・患者さんが来られるまでの時間、記憶と思いを振り払うことを繰り返し、「すべての存在は等しく尊い」と唱えることでさらに気持ちが落ち着いた。これにより今までの記憶による患者さんに対する思い込みがなくなった。→[心が調えられる]
・思い込みがなくなったことで、目の前のことに集中ができて、患者さんにとって必要なことが自然に行えた。→[他者の喜びのために働く]
以上のような経過で、働きの秘訣を実践することができたのだと思います。

働きの秘訣をはっきりと体感できた出来事でした。

ハルシャニーハルシャニー


1件のコメント

  1. ヨーガの教えが日常に沿って分かり易く説明されていたので、とても参考になりました。
    私も人に接する仕事をしています。せのためか、自分に置き換えて考えることができ、働きの秘訣をさっそく実践してみようと思いました。

    • ちささん、コメントありがとうございます!
      ちささんも様々な方と接するお仕事ですし、丁寧かつ迅速な対応が求められることもあるかと思います。お互い、目の前のことに集中して最善を尽くせるようにしたいですね。

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