托鉢遊行の旅日記 (中編)


トラックに水をぶっ掛けられながら、野洲川大橋へとたどり着く。まだ日が暮れるには早かったが、疲労困憊していたので、雨が避けられる橋の下で1日目の夜を過ごすことにした。

明かりがないので、夜は何もすることがない。めちゃくちゃに疲れているので、ひたすら寝ることになる。瞑想をしてみようと座ってみるが、寒いのしんどいので続かない。瞑想するには自分の部屋が一番だと思うとともに、瞑想するための力も残しておかなければ無理だと悟る。

野洲川大橋

野洲川大橋

朝目を覚ますと何やら人の気配がする。起き上がって服を着ていると、警察官が2人やって来た。こんなところでは橋の下で寝ている人もいない。不審にも思ったのだろうが、結構心配して見に来てくれたようだった。身分証明書を見せなさいと言われたが、僕は何も持ってない。お金も持たず托鉢・野宿で歩いていることを説明すると、「食べ物をくれる人はいるの」「気を付けて」と言って帰っていった。

荷物をまとめて歩き出すとお腹が空いている。昨日は一食きりだった。仏教僧は午前中に一食のみが許されるのだが、今回は事情によっては二食もかまわないことにしていた。歩き始めたのが多分6時台。ちょっと6時に托鉢に押し掛けるのは厳しいかと思い、8時台ぐらいになってから行くことにした。

コンビニを見つける。コンビニエンスストアは、毎日余った弁当をごみに出して捨てている。それならもらえるんではないかと思い入ってみるも、もう昨晩捨てたとのこと。

堰を切ってしまったので、そのまま隣りの家に入る。そこのご主人はとても親切で、奥さんにジャムパンとバナナを持ってこさせてくれた。またもや托鉢のイメージとは違っていたが、本当にこの時は嬉しかった。なぜだか分からないけど嬉しくて、破顔でお礼を言って出てきた。前の道に座りこみ、すぐさま食べる。また元気が出てきたが、今日はもう一度食べないとだめだろうなとも思う。

朝から筋肉痛がひどくて休み休み歩いていた。天気は良くないが雨でないだけいい。ただてくてくと歩き、何を考えることもない。予想していたような感銘や悲嘆もないまま、ぽつぽつと歩き続ける。

三上山(近江富士)

三上山(近江富士)

サーナンダが当時働いていた会社の横を通り、近江富士の麓を抜ける。午後になって今日2回目の托鉢。個人商店で戴いたものはメロンパン。こうしてもらえる食べ物の種類も意外だったが、托鉢に多くの人が応じてくれるというのも予想を裏切られる意外な発見だった。人の世もまだ捨てたものではないということか。

2日目の夜は臨済宗総本山永源寺横にある湖にて泊まる。寺の宿坊にでも行ってみようかと思ったが、こんないいところで室内に寝る法はないと思い、道際の一本の紅葉の下に荷を下ろす。

はたして「樹下に眠る」の理想がかなったわけだ。そこは本当にいいところで、水の流れる音と蛙の鳴き声以外には何も聞こえない。車も通らず、昨日のように警察に見つかることもないだろう。木の間からおぼろ月を眺めつつ、僕は眠りに入った。とにかく疲れていた。

永源寺湖

永源寺湖

朝起きればやはり体がガクガクだった。本当に毎朝「今日一日、夕方まで歩き続けられるだろうか」と思った。10時ごろまではガタガタのまま歩く。不思議なことにその頃から少し楽になる。慣れてきたのか麻痺してきたのか、とにかく日々そういう状態だった。

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