ヨガと食事—前後2時間空ける理由とその深い心理学的生理学


ヨガのポーズを行う前後には、それぞれ2時間ほど食事を摂らないように勧められています。私たちのヨーガ・瞑想クラスでも、そのようにお願いしています。

しかし、そもそもどうしてヨガの前後で食事をしないほうがよいのでしょうか? また2時間という数字にどのような意味があるのでしょう?

実は、それには人間の体が行っている消化の仕組みと、さらには食物でできた肉体の内側にある精妙な気の働き、そしてヨガのポーズが体に及ぼしている深い効果が関係しています。

ヨガの前後で食事を控える理由を知っていくだけでも、私たちが普段気づいていない体と気の深い働きを学んでいくことができます。

ヨーガの前に食事を2時間空ける理由その1

ヨガのポーズ(インドのサンスクリット語で正確には「ヨーガ」と読み、ポーズのことは「アーサナ」(坐法)といいます)を行う前に、食事を2時間ほど控える理由は、胃の消化時間が関係しています。

食べ物の質・量による消化への負担

私たち人間の体は、胃で食べ物を消化し、腸で吸収を行っています。消化にかかる時間は食べたものによって異なります。

例えば、お肉は胃に負担をかけて、消化に時間がかかります。私の体感で言えば、ヨーガを始めたばかりのころ、まだ肉を普通に食べながらヨーガを行っていたとき、食後6時間がたっているのに、まだお腹に何か残っているのを感じたことがありました。それで肉を中心にした食事は胃に負担をかけて良くないと実感して、ヨーガで教えられた野菜中心の食事に本格的に変更しました。

また食べるものの種類以上に、暴食が最も胃に負担をかけるのは誰もが実感していることだと思います。お祝いなど楽しい食事の席などは特例があるとしても、日常的にはできるだけ節食・素食を心掛けるほうが良いのは当然のことです。

胃腸の消化吸収にかかる時間

野菜中心の節度をもった食事をした場合、胃の消化にかかる時間は2時間くらいです。そうでない食事でも暴食でなければ、だいたい3時間くらいで消化が終わります。そのあと3〜5時間をかけて腸での吸収が終わります。そして、食後7時間ほどでグゥ〜とお腹が鳴り出して強い空腹感を感じ、それによって胃腸の大掃除が行われます。

これは私自身の体感と観察なので、人によって多少違うところもあるでしょう。ただ、胃の消化に2〜3時間かかるというのは生理学的研究とも一致しているようです。(ちなみに、寝る前に食べると体に悪いとか太ると言われるのは、胃での消化が終わる前に眠ると、胃の働きが停滞してしまうからだそうです)

2時間という数字が表す理由

ヨーガのアーサナを行う前に最低2時間食事を空けるのは、食べ物の消化を終わらせて、胃を空っぽにするためです。胃に食べ物が残っていると、ポーズを取ることで胃を圧迫して、気持ち悪くなったりします。

気持ち悪くなるという理由は聞いたことがあるかもしれませんが、2時間という具体的な数字には、胃の消化が完了する時間という明確な理由があります。

ヨーガの前に食事を2時間空ける理由その2

お腹に物が入っていると散漫になる

2つ目の理由も胃の消化に関係します。ただし、ポーズが胃を圧迫して気持ち悪くなるからではありません。お腹が物が入っていると集中ができないからです。

食べた後には眠くなるように、食べ物の消化には多大なエネルギーが使われます。眠くなるということは、最も酸素と血液を必要とする脳が働かなくなるということです。酸素は血液によって運ばれますが、そのほとんどが胃に集中して、そのぶん頭には血液が回りません。

それで心は散漫になってヨーガに集中できず、特に瞑想はまったくうまくいきません。瞑想では静かに座って心の力で集中していきます。そのため、心が散漫であれば、すぐに眠くなってしまいます。ただでさえ集中が難しいところに、胃の消化に血液が回って脳が酸欠状態になれば、瞑想に座っても、ただただ散漫な思いを繰り返すだけになります。

ヨーガの心理学的生理学

物質的にいえば、脳に酸素が運ばれないということになりますが、古くからヨーガでは、これをプラーナ(気・生命力)の働きによって説明してきました。

プラーナとは、人体のあらゆる生理機能を働かせる、物質よりも精妙な力です。日本人に馴染みのある言い方をすれば、「気」と言っていいでしょう。気は「病気」「元気」「気持ち」「やる気」などいうように、体のことだけでなく心のことも表します。プラーナもそれと同様です。単なる表面的な物質現象だけでなく、それを内側から働かせる力を意味します。

プラーナは人体の中で5つの作用に別れます。呼吸作用を司るものは同じくプラーナと呼ばれます。そして消化作用を司るのがサマーナ、排泄作用はアパーナ、循環作用を司るのはヴィヤーナ、そして死に際して魂が抜ける時に働く上昇気のウダーナで5つになります。

このように、肉体における生理的な現象を引き起こしているのが、根本的な生命力プラーナです。それが肉体も心も動かしているとヨーガでは考えます。

プラーナの発見に至った生死の観察

それは生き物が「息を引き取る」ことの観察から始まりました。肉体は以前と同じように見えても、死ぬ前の体と死体とでは何が違うのか? ちょうど日本語でも「息を引き取る」と言うように、体に呼吸があるかないかです。たとえ物質を同じように組み合わせても生物は作れません。生体と死体の違いは「息」が有るか無いかであり、それが「生き」が有るか無いかでもあるのです。

そうして呼吸作用がまず「プラーナ」(本来は「生命」という意味)と名づけられました。それから、「呼吸をさせている根本の力はいったい何なのか?」と探求することで、呼吸を動かす深遠な生命力がプラーナと呼ばれるようになりました。そして、そのプラーナが呼吸作用だけでなく、人体のあらゆる作用を働かせているという生理学を発達させたのです。

体と心を一体に見るヨーガによる説明

ヨーガの生理学と心理学を一体に見る観点から言えば、食べると眠くなる、食べて2〜3時間はヨーガも瞑想も難しい理由とは、プラーナが生理的な消化作用に集中してしまい、心理的な集中にプラーナを向けることが難しくなるからということになります。つまりプラーナを胃の消化に集中させていれば、瞑想で心に集中させるのは難しいということです。

ヨーガの後に食事を2時間空ける理由

ヨーガのアーサナ(ポーズ)を行った後に2時間食事を空けたほうが良い理由は、先ほどとは逆に、ヨーガでせっかく蓄積したプラーナを消化作用によって浪費しないためです。その背景には、ヨーガのアーサナが体や心にもたらす深遠な効果と、人という存在に対する深い理解があります。

間違った理由

例えばスポーツをするとお腹が減ります。それは運動によって体力を消耗するからです。しかしヨーガをそれと同じように考えてはいけません。

「ヨガをすると消化吸収の働きが良くなるから、お腹が空いていても、食べると太るので良くありません」と説明されることがあるようです。

そういう説明をする人はヨーガのまねごとをしているだけで、実際にはヨーガを行っていません。運動と同じ経験しかなく、肉体だけを見て、ヨーガの本当の効果を実感していないのです。そういう人にヨーガを習ってはいけません。

ヨーガの本当の効果

ヨーガのアーサナには、普段は食物や呼吸から間接的に取り入れているプラーナを直接体内から活性化させるという効果があります。

ですからアーサナを毎日きちんと行っていると、食事の量や呼吸数が自然に減っていきます。睡眠も減ります。そうしたことを通じてプラーナを蓄積し、体力を回復する必要がなくなってくるからです。

アーサナを行った直後はそれが最も顕著です。お腹が減るどころか、むしろ食べたい気持ちがわいてきません。そうして自然に食欲が制御されます。これがヨーガのアーサナをすることで痩せる大きな理由でもあるのです。

ヨーガのアーサナは、精妙なプラーナの体に的確な刺激を与えて活性化します。いわば体に本来備わっている自己治癒力を活性化するわけです。そこが肉体的な運動やエクササイズとは違うところです。

肉体の内側にあるプラーナの体

古くからヨーガでは人体の観察を深め、人間は5つの「鞘」によって構成されていると理解してきました。

1つ目は「食物で構成される鞘」で肉体を意味します。その内側から肉体を支えるのが、2つ目の「プラーナで構成される鞘」です。これまで説明してきたプラーナによってできた、より精妙な体です。

ヨーガのアーサナはこのプラーナの体に直接働きかけます。そして外部のものに依存することなく、生命力であるプラーナそのものを活性化します。

プラーナの活性と調和

そのために重要なのは、アーサナにおける正しい形態と呼吸です。

アーサナの形態は、プラーナが特に集中している脊椎の7つの中枢のうち、下から5つをそれぞれ刺激する形を取ります。そのプラーナの中枢をチャクラと呼びます。ヨーガ・瞑想クラスで教えているアーサナは、このチャクラを下から順に刺激するように組み立てられています。そして的確に刺激を伝えることでプラーナを活性化させ、5つのチャクラに配置された呼吸や消化など、プラーナの5つの作用を高めるとともに、心の集中がなされるように工夫されています。

また、プラーナは主に呼吸作用を表すように、心や体の状態は呼吸に表れます。ですから呼吸に意識を集中して深く吐ききることで、プラーナの安定と調和をはかり、心が集中しやすい状態を作り出します。

心を構成する3つの鞘

5つの「鞘」の残り3つは、心を重層的に理解して分析したものです。3つ目は「想念で構成される鞘」です。プラーナの体が外側で肉体に接し、内側でこの想念の体に接しています。ですからプラーナは肉体にも心にも影響を与え、「気」は体のことも心のことも関係するのです。

4つ目は「認識で構成される鞘」で、思いの奥にあって自分や他人や世界を認識する心の基礎をなします。5つ目は「至福で構成される鞘」と呼ばれます。これは喜びや幸せを感じたり求めたりする心の根底です。

この3つ目から5つ目が、私たちが漠然と「心」という言葉で表しているものを、より分析的に理解した重層的構造です。

ヨーガの五蔵説

5つの「鞘」は、外側から内側に向かってより精妙なものになり、次々に折り重なる構造をもつもので、まさに鞘と呼ぶのにふさわしい構造をしています。この教えを「五蔵説」といいます。

ヨーガが教える人を構成する5つの鞘(五蔵説)

  1. 食物で構成される鞘————肉体
  2. プラーナで構成される鞘——生気体
  3. 想念で構成される鞘————想念体
  4. 認識で構成される鞘————認識体
  5. 至福で構成される鞘————福楽体

ヨーガでは人間を単なる肉体だけでなく、プラーナや心の重層的な構造として捉え、その上でそれらをより良い方向に向かわせ、ヨーガの目的である集中・瞑想に役立てます。

プラーナの浪費を避けるのが理由

ヨーガのアーサナを行った後すぐに食事を摂らないほうがいいのは、こうした理解に基づくアーサナの効果によって、プラーナが活性・調和しているにも関わらず、すぐに食事を行うとせっかくのプラーナが消化作用に浪費されてしまうからです。

同じ理由で、すぐさま外界の刺激にさらされるのは避けたほうがいいです。繁華街やテレビなどで目で見るもの、耳で聞くもの、匂いや味や触感の過剰な刺激にさらされると、それに心が反応して、内面に集中されたプラーナが外界への反応に浪費されてしまいます。

正しくアーサナを行えば自ずと実感されると思いますが、せっかくの落ち着いて調和した感じが、食べることや外界の刺激によって崩されるように感じます。ですから、ヨーガのアーサナを行った後は、その心地良い感じが続くあいだ、食事などは避けるほうが効果的です。(ただし、病人ではないですから、過敏にいたわるような必要はありません)

2時間という数字が示すこと

2時間という具体的な数字は、その直接的な効果が持続する時間の目安です。ただ、心で直接に感じていなくても、間接的な効果は引き続きあります。普段から節食・粗食に心掛けることで、ヨーガの効果はアーサナを行っている時だけでなく、日常の体や心の状態に影響を与えていきます。(前後4時間も何も食べないでお腹は空かないの?!と、心配する方もいるかもしれませんが、全く大丈夫です。先に書いたように、食欲よりもむしろ、もっと素晴らしい心身の心地良さがあります!)

まとめ

・ヨーガの前に食事を空けるのは、胃を空っぽにして行いやすくするため。

・また、心が散漫になるのを避けるため。

・その背景には、生理学と心理学が一体となったヨーガの深い観察と理解がある。

・ヨーガの後に食事を空けるのは、プラーナを浪費しないため。


・その背景には、アーサナの深い効果と五蔵説の理解がある。

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