ヨーガの心理学と方法(Yogasūtra1.13)


योगसूत्रम्SangamB心の思い計らいを止める2つの方法のうち、繰り返し行う修練とは、心を静止させようと努力することである。

このスートラ(経文)には、どうして心は落ち着かないのか、なぜ動揺して不安を作り出すのかというメカニズムを把握した背景があって、そのうえで、このしくみをどうやって変えていったらいいのかという方法が示されています。

ヨーガでは、心だけでなくあらゆるものが、3つの状態の間を揺れ動いているといいます。どんよりとして重たく鈍い、動きがない状態(タマス)と、激しく動き回る不安定な状態(ラジャス)、それから軽くて明るくて心地良い状態(サットヴァ)です。

通常心は、1番目のタマスの状態と、2番目のラジャスの状態を揺れ動いていて、ほんの時折3番目のサットヴァの状態にもなります。普通で言うところの躁鬱の状態は、1番目と2番目の間を激しく動いている心理状態ですね。病気までいかなくても、誰もが経験していることだと思います。

それで常識的には、ネガティブとかポジティブとか、怠惰とか活発とかいって、1番目のタマスと2番目のラジャスだけを見ていて、ラジャスの方が良いと思っています。でも、山もあれば谷もあるで、プラスにはマイナスが付きものです。ポジティブになろうと思う裏側には、ネガティブな思いがあることも自覚しています。良いという思いは、悪いという思いがあって成り立ちます。それら両方がなくなって、固定観念や束縛がない軽やかな心理状態であるのが3つめのサットヴァな状態で、その時には、こだわりなく必要なことができる軽快さがあります。

ヨーガの心理分析では、心はたいてい不安定な活動状態にあって、それに付きものの鈍重な心理状態にもなると理解しています。その上で、それら両方をなくして、心地良い軽快な状態に変化していくことを目指しているのです。

そしてもう1つ。心には慣性の法則が働いているということも発見しました。1つの心理状態になると、それを続けようとする習性です。気持ちが落ち込むと、言動も荒れてきて、さらに落ち込むようなことをやってしまう。あるいは、気分がハイになると、いらないことまでしてしまい、ますます不安定で混乱した状態を作り出してしまう。心の性質に従っている限り、それらを心で止めるのはそうとう難しくなります。

それで考えました。この法則、逆に使おう! 今すぐこの慣性の法則から逃れるのは難しいかもしれない。でもそれを逆に利用して、心地良いサットヴァの性質でいられるように、心の習慣を変えていったらいい。 軽快で心地良い新しい性質を入れていこうという作戦です。ヨーガ行者、冷静です。心理学的分析にのっとった、無理のない的確な方法でした。

それで、心の慣性を利用して、繰り返し、サットヴァの静止した状態に留まる修練を行うのが良いということになりました。そこで生まれたのが瞑想です。瞑想は集中することから始まります。1つの対象に意識を留めようとします。それを日々習慣になるまで繰り返し行うのです。

そして、ヨーガで最も有名になったいろいろなポーズ。アーサナといいますが、それも体をある姿勢で静止させることが重要です(落ち着きなく、激しく動く体操のようなやり方では、ヨーガ本来の目的を果たしません。ヨーガはエクササイズとは異なるものです)。同時に呼吸も静止させます。アーサナはあえて呼吸が荒れるような厳しい形を作っているのですが、その中でも決して呼吸が乱れないように訓練していきます。

そうすることで、体も呼吸も心も静止する習慣がついてきて、それらを乱すようなことが起こっても、動揺しないようになっていきます。つまり、病気にならない、気が乱れない、心が穏やかで落ち着いている、というのが当たり前になります。

このようにヨーガの方法は、体と呼吸の静止を通じて、心を静止させるための努力を繰り返し修練するというスートラの言葉に集約されているのです。