こうでないといけない、にとらわれず楽しく料理する!

ヨーガを始める前の私は、食べることが好き、というか空腹状態に不安を感じていました。ちょっとお腹が空くと何かを口にする習慣があり、お腹が空いている時間がほぼなかったのではないかと思います。
ヨーガを始めてアーサナ・クラスに通うようになってからは、まず食事に関するヨーガの考え方に衝撃を受けました。
アーサナの前後2時間は食事を摂らない方がよい、というのがそもそも無理で、クラスに通っていても最初の1年ほどは空腹感に耐えられず、クラス後割とすぐに食べていました。
しかしクラスに参加する度にこのままではいけないと思うようになり、次第に後ろめたさを感じるようになりました。
そしてある日のクラスの後、小1時間経ったし仕事の前に軽く食べておこうと思いおにぎりを食べたところ、急に激しい腹痛に見舞われました。もう二度とすぐに食べるのはやめよう!と決意し、同時に何を食べるべきかを意識するようになっていきました。

いざ食事と向き合うとなると、大きな問題が一つ。それは、料理に対する強い苦手意識です。いつも、作らなければという義務感が伴い、ストレスを感じていました。段取りを考えて作業をすることが難しく、特にレシピを見るのが苦手で、一度レシピを意識してしまうと一層手際良く作業することが出来なくなり、途中で料理することを投げ出したくなるほど疲れてしまうこともしばしばでした。
ヨーガの料理教室「さまらさの台所」のことを知っても、クラスに参加すること自体のハードルが高くて尻込みしていました。
それでも共にヨーガを学ぶ仲間が参加して楽しかったと言っているのを聞く度に気になるようになり、少しずつ前向きな気持ちになっていったので、勇気を出して参加するようになりました。
いざ参加してみると、予想通り失敗して迷惑をかけたと思われる状況にもなりましたが、フォローしてもらいながら楽しく調理に参加することができました。作った料理をみんなで食べるのは何より嬉しかったです。
ただ、参加する時は毎回緊張していたし、教わったレシピを家で作ることも気合を入れて臨まないとできない状態が続きました。さまらさのレシピだけがさまらさではないと聞いても、教わった通りにやらなければいけないという思いが常に頭の隅にあって、腰を重くしていたのだと思います。

近所の野川にて。春頃から繁殖期のためいなくなっていたカルガモが、久しぶりに戻ってきていました。

コロナ禍になり、「さまらさの台所」もオンライン受講する形になりました。
動画なので何度でも見ることができ、とても分かりやすく、見ているだけでも楽しくなるので、見る度に元気をもらえました。
食にまつわるお話も興味深いものばかりで、実際のクラスに参加しているのと同じように気付きや学びがあります。
ただ、いつでも動画を見て挑戦しやすくなるはず、と思っていたのに、気付けば「〜しなければ」にとらわれてしまっていました。教わってからしばらくはそのメニューを作るのですが、次第に作らなくなり「作らなければ」と気が重たくなってしまいました。加えて、コロナ禍になってこれまで以上に仕事が忙しくなっていたため、忙しいから動画を見たり作ったりする時間がないと自分で自分に言い訳をしていました。
せっかくのオンライン受講の良さを生かすどころか、このままでは以前よりも良くない状況になってしまうかもしれない…
もう何年も同じところをぐるぐるしていること自体にほとほと疲れてしまい、決心しました。とにかくやる!と。レシピ通りにやらなくていいから適当にやってみる。悟りへの大切な乗り物であるこの身体を良い状態に保つためにも、今度こそ真剣に向き合う。
そうして日々を過ごすようにすると、少しずつですが料理に対する力みがなくなって、適当にできるようになっていきました。
初めて料理と自然な形で向き合えるようになってきた気がしました。

それからしばらく経った今年6月。
「さまらさの台所」はパン作りでした。
レシピを見ると行程がいくつもあるのでこれは難しいかもと気構えていましたが、動画の中で講師のシャチーさんが楽しそうに軽やかな手付きでパン生地をこねているのを見ていたら、すぐにでもやってみたくなりました。
実際に挑戦してみると、これ以上は失敗出来ないだろうというくらい様々なトラブルが起きましたが、諦めず生地を大切に扱うことだけに集中。出来上がったパンは過発酵したこともあり、ちょっと硬くてそんなに膨らまなかったのですが、とにかく焼き上がったパンが可愛くて、嬉しくてたまらない気持ちになりました。

無事焼き上がり、夫に撮ってもらいました。緊張と集中がとけてホッとした顔をしてるなと思います…

苦戦しても最後までやり遂げられたのは、動画の力が大きかったのではないかと感じています。
シャチーさんにこねられている生地はどんどん艶やかに生き生きしてくるように見えてきて、手付きはすぐに真似出来なくてもこの感じをイメージしてやってみようと思えたのです。
2回目の挑戦の際には、動画にとらわれすぎないように自分のリズムで作るようにしました。1回目の時よりも作業自体を楽しむことができて、パンも少しふっくらしたのでほっとしました。

動画の中で、さまらさについての話がありました。始まった頃から関わられているシャチーさんのお話は興味深く、改めて「さまらさの台所」から学べることの多さや、ヨーガを実践していく上での料理の重要さを感じました。
何度も繰り返していくうちにいろいろなものにチャレンジしていけるようになること。繰り返しやることで慣れて身に付いていけるようになること。

お話の最後、「こうでないといけない、ということはない」という言葉には、本当にそうだと強く頷きました。「こうではないといけない」にとらわれたままでは、本当に大切なことを見失ったまま料理することになります。
教わったことだけが「さまらさ」ではなく、ベースはヨーガにある。大切なのは、自分のための料理ではなく、一緒に食べる人のことを考えて料理を作ること。みんなで歓ぶのが「さまらさ」。
何にもとらわれず自由に、食べる人たちのことを思い、食材を大切に作る。この上なくシンプルで、なんて素晴らしいのだろうと思います。

相変わらず仕事が大半の時間を占める日々ですが、以前よりも気楽に台所に立つようになりましたし、料理する楽しさを感じられるようになっています。手際良くとはまだまだいえないし、出来上がりをイメージしても作っても思っていたのとは違う料理になることも多々あります。それでもいちいち落ち込んだりするのがほぼなくなりました。
苦手なこと、できないことが上手くなるのは一筋縄ではいきませんが、その分伸びしろがあるはずと信じて料理を楽しんでいきたいです。

焼き上がったパン。手前が塩パン、奥がバターパンです。

ハルシャニー


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