「新訳 ラーマーヤナ」

皆さん、こんにちは、ダルミニーです。

さてダシャラタ王がカイケーイー王妃と交わした二つの約束のことを聞いたラーマは素直に、父王の約束を果たすため、王妃の願いを叶えるために、シータとラクシュマナを連れて森へ旅立ってしまいました。ラーマがいなければ生きてはいけないダシャラタ王は、愛する息子を見捨て追放したこと、また離ればなれになってしまう悲しさに心を痛め、ラーマの名前を呼びながら死んでしまいます。

その頃、シャトルグナと一緒に伯父さんの家にいたバラタは、さまざまな不吉な夢を見て誰かが死んだのではないかと非情な恐怖を感じていました。そこへ、アヨーディヤーから迎えの使者が到着します。七晩かけてアヨーディヤーについたバラタは、人影のない灰色に沈んだ都を見るのです。

バラタは自分の母カイケーイー妃から、父王の死とラーマたちが追放されたことを聞いて苦悩にさいなまれます。バラタは、二人の母の苦しみやすべての人の悲しみを思って泣き、カイケーイー妃を非難します。「涙に声をつまらせた市民ににらまれた時、私はあなたの犯した罪に耐えることができません。友人、親族が頼りにしているのは長兄ラーマであることを、あなたは知っているはずだ」と。

そしてバラタを王位につけようと協議する人々に言います。

「王位は長子が相続するというのが、わが王家の永遠の慣習である。だから、あなたたち老練な方々は、私に王位につけと、そのようなことを言ってはならぬ。むしろ私が森に十四年間住むことにしよう。私は長兄ラーマを森から連れ戻そう」

バラタは軍隊を引き連れて森にラーマを迎えに行き、アヨーディヤーに帰って来てくれるよう懇願します。しかしラーマは聞き入れてくれません。

「父王の幸福を願うならばラーマの言葉を受け入れよ。智慧ある顧問達と共に審議して業務を実行せよ。母君がそなたのために成されたことを怨みに思ってはいけない」とバラタを諭します。

バラタは泣く泣く、ラーマの黄金の飾りのついた履き物を頭に載せ、都に帰るのです。このときのバラタのことを思うと涙が出て仕方がありません。いつも優しく兄弟たちにも親切で、大好きだったお兄さん、どんなにかバラタはラーマに帰ってきて欲しかったことでしょう。どんなにかラーマと一緒に、また王宮で暮らしたかったことでしょう。それもこれも、みんな自分の母親のせいなのです。バラタは子供の頃から、長兄のラーマが当然王位に就くものだと信じていたのです。これからは自分が、父王やラーマの代りに仕事をしなければなりません。どんなにか不安だったことでしょう。でも愛する兄さんであるラーマの言いつけにバラタが背くはずもありません。ラーマを尊敬しているバラタは、都に帰ってから王宮を出て、ナンディグラーマ村に行きました。そこでバラタは、ラーマと同じように樹皮の衣、結髪をつけて、敷草の上で寝て、果実や根菜を食べ、十四年間、ラーマの履き物に一切の法令を報告して決定し、いつも履き物を頼りにして政治を行なったのでした。バラタは、ラーマと別れるときにこう告げます。

「十四年の月日が満ちた時に、もし私があなたに会えない時は、私は火に身を投じます」

悲しみにくれるバラタにラーマは優しく「そうしよう」と約束し、愛情深く抱きしめます。

バラタは幾晩涙で枕を濡らしたことでしょうか。愛するラーマ、ラーマを頼りとして今までも生きてきたのです。それなのに、自分のためにラーマは森に追放されたのです。バラタはラーマを人間とは思っていません。神だと知っているからこそ、よけい辛かったと思います。バラタを思う時、そのバラタの苦しみが乗り移ったかのようになって悲しくなります。バラタの十四年間は苦悩に堪え忍ぶ十四年間だったと思います。ただラーマの帰りを待ちわび、それまでの間、りっぱにラーマの代りにアヨーディヤーを守ろうと、ただそれだけを思い、仕事に専念していたのだと思います。バラタは宣言します。

「この王国アヨーディヤーを象徴する尊い履き物、この委託物をラーマに返還した時、私は罪なきものとなるのだ」

ラクシュマナのようにラーマと共に行動し、献身するものもあれば、バラタのように遠く離れたところから、常にラーマを慕い、ラーマのためだけに生き、献身する姿もあります。

私は、バラタから、ラーマへの一途な愛と献身を感じました。神への、存在への、真実への愛と信仰です。ヨーガでは、真実に対する揺るぎない信頼、信仰というものを必要とします。それは自分自身が神である。全てのものが神である。その神、存在に献身し奉仕せよというものです。私たちは幾度となく、師からそのことを教えていただいています。ヨーガは神なる自分、存在、真実、ただそれだけ、ただそれだけを信頼して生きていくようにと教えてくれているのです。揺るぎない信仰が、本物の献身へと私たちを導いてくれるのだと思います。

ラーマーヤナには、たくさんの献身者、バクタたちが登場します。それぞれがそれぞれの場所で、精一杯の奉仕と献身をラーマに捧げます。そのバクタたちが、いっそう神を際だたせ、輝かせるのです。その一途な愛と献身に強い憧れと尊敬を覚え、自分もそうありたいと願うのです。

ジャイ シュリー ラーマ  ジャイ シュリー バラタ

ラーマーヤナ

 ダルミニー


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