『茶の本』〜花への感謝〜

2019年、師シュリー・マハーヨーギーが花瓶のお花を整えられているのを近くで拝見することがありました。しぼんだ花を除いたり、位置を直したりしながら短時間で全体を整えられました。花達が息を吹き返したかのようにシャンとなり、花が浮き上がって鮮明に見えたのを覚えています。純粋にきれいだなと感動しました。
この経験がきっかけとなり、日々の生活で花の美しさに気付くことが増え、徐々に花に興味を持つようになりました。やがて家や職場でも花を飾るようになりました。
そんな折、先輩弟子から岡倉天心の『茶の本』を紹介して頂きました。岡倉天心は明治時代の美術研究者、思想家であり、日本の伝統美術を海外に紹介したことで有名です。インド思想に強い影響を受け、ラビンドラナート・タゴールやヴィヴェーカーナンダとの交流もあったそうです。この本の中で花に関する印象的な記述がありました。

喜びにも悲しみにも、花はわれわれの不断の友である。花とともに飲み、共に食らい、共に歌い、共に踊り、共に戯れる。花を飾って結婚の式をあげ、花をもって命名の式を行なう。(中略) 花なくてどうして生きて行かれよう。花を奪われた世界を考えてみても恐ろしい。病める人の枕べに非常な慰安をもたらし、疲れた人々の闇の世界に喜悦の光をもたらすものではないか。その澄みきった淡い色は、ちょうど美しい子供をしみじみながめていると失われた希望が思い起こされるように、失われようとしている宇宙に対する信念を回復してくれる。われらが土に葬られる時、われらの墓辺を、悲しみに沈んで低徊するものは花である。

『茶の本』 岡倉覚三著 村岡博訳 

花に対する深い洞察に心打たれます。また、他の部分では花を生き物として大切に扱うことを説いており、花への感謝、愛も表現されています。今まで気付きませんでしたが、私達は生活の色々な場面で花から癒しを頂いています。もしもこの世界に花がなかったら──春に桜がなかったら、卒業式や入学式に花束がなかったら、きっと味気ないものとなるでしょう。そう思うと花への感謝が湧き上がってきますね。それは生きとし生ける全てのものへの感謝へと広がるでしょう。

まだ夜明け前、静かな朝、座って目を閉じます。私は誰か、真実とは何かを探ります。気付きが与えられる時、無駄なものが溶け、安らかさが訪れます。自然と感謝が沸き起こります。

私達は互いに助け合って生きています。
それを忘れずにいたいと思います。

島本廉


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