コツを持たないコツ

春から担当が変わり新しい方の支援に入っています(私はヘルパーの仕事をしています)

私の事務所は身体に障害がある方の支援を主に担当していているのですが、今回新しく入ることになった方は知的に障害があり、精神的にも少し不安定なところがあります。私もですが、事務所としてもあまり経験がない仕事内容です。

先日、その方を担当しているヘルパー同士で集まり、支援の情報交換をしました。みなまだ慣れず、それぞれに不安と悩みがありました。

私も担当してわずかですので、その方を理解しているとは到底言えないのですが、比較的上手く支援に入っていると思われているようで(私はそうは思わないのですが……)「何か支援のコツはありますか?」と聞かれました。いろいろと考えたあげく出てきたのは「分かりません……」という言葉でした。

本当に分からなかったのです。なぜなら、その方の様子は支援の度に違います。気分も体調ももちろん違うのです。ある時はイライラしている。ある時はとても親しげにくっついてこられる。一日に何度も機嫌が変わることもあります。そのどれをとっても、私が原因なのかどうかは分かりません。私が支援に入る前に何か良いことがあったのかもしれないし、何か嫌なことがあったのかもしれない、そのような条件の中から人のことを断定することはとてもできないと思ったからです。

毎回変わることに対して支援の側だけが「このようにすれば上手く入れる」というひとつのコツを出すことはできないと思い、思わず正直に言ってしまった言葉が「分かりません」でした。

でもそれではあまりにもいい加減だな〜と思い、終わってからまた考えていました。それで出た答えは「こちら側の心を空っぽにしておくこと」(心に一物もないようにしておくこと)でした。ころころ変わる心に対応するには、こちらの心を空っぽにして、相手がどういう態度に出てもそれに順応して対応できるようにしておくことかなと思いました。

コツというのは時として断定的なもので、コツを作るとそれに縛られてしまうこともあります。コツを持たないことがコツということもあると思いました。

今のところそれ以外にコツはないなと思ったのですが、「今のところ」ではなく、これは本当はどんな仕事のコツでもあるのではないかと思いました。

新しい仕事に就くと、慣れるまでいろいろ大変ですが、このように新鮮な気付きをいただくこともあり、とても感謝しています。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です