火の遣い手たち

みなさん、こんにちは

今回もまた本願寺出版社の「ブッダ」より印象に残った内容をご紹介いたします。今日登場していただく修行者はウルヴィルヴァーさんです。

夕闇の中、炎が怪しく揺らめいている。ウルヴィルヴァーが右手を差し出すと、炎はぱっと大きく燃え上がり火柱となった。あたりが明るくなり火の粉が雨のように頭上に降り注いだ。

「兄さんの力は衰えませんね」とガヤーが声をかけた。ブッダの弟子のサンガ(集まり)に加わるまで、ウルヴィルヴァー、ナディー、ガヤーのカーシャパ三兄弟はそれぞれに大勢の弟子と信者をもつ結髪の行者だった。中でも長兄のウルヴィルヴァーは強大な神通力を持ち、数々の奇跡を起こしていた。

「こんな力は何もならない」長兄は独り言のように呟き、両手を広げて炎を鎮めた。瞬く間に天に届くほどの火柱は小指の先に灯る火となった。

「ブッダはそれ以上の力をお持ちなのですか?」ブッダはウルヴィルヴァーの聖火堂で無数の奇跡を現出させた。神通力の対決で敗北した長兄は火の崇拝を止め、ブッダに帰依し、五百人の弟子もそれに続いた。

「ガヤー、お前にもよく分っているはずだ。ブッダの特別な力、人を包み込む暖かく柔らかな力を」ブッダがウルヴィルヴァーと弟子を従えて、ガヤーたちの前に姿をみせた瞬間、清らかな涼風が吹き抜けたようだった。ブッダは一言も発しないうちにその場にいた者の心をしっかりとつかんだのだ。次兄のナディーに続いて、ガヤーもブッダに帰依を申し出た。

「後悔はしておられませんね」そういうガヤーの前で、ウルヴィルヴァーは土をすくって火にかけた。灰色の煙が立ち上り、火は一瞬、赤い輝きを放って消えた。

「もちろんだ。ブッダの示された道を私は歩いていく。さあ、帰ろう、ガヤー、そろそろブッダの説法が始まる時間だ」

月明かりに照らされて闇の中ぼんやりと道が浮かび上がっている。ガヤーは歩き始めた長兄のあとを追って足を速めた。

二千五百年前のインドの深い森の中、どれくらいの苦行者たちが修行をしていたのでしょうか。その中でもカーシャバ三兄弟は、ブッダの存在を素直に認め、帰依した人たちだったのでした。中には尊者と呼ばれながら、自分の考えをなかなか改めることができず、ブッダを誹謗中傷し、陥れようとする人もいたようです。五百人もの弟子を持ち、神通力もあったウルヴィルヴァーでしたが、真実の前では謙虚にこうべを垂れ、すべてを捨ててブッダに帰依したのでした。ウルヴィルヴァーは本来の目的を忘れてはいなかった、真実に通じる確かな道をみつけたウルヴィルヴァーは、歓びをもってブッダに従ったのだと思いました。

ブッダ (22)

ダルミニー

 

 


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