マジック・フルート

クリシュナ神はインドでとても人気のある神さまです。ヴリンダーヴァンの森の中でゴーピー(牧女)たちと戯れた物語が聖典に記されていますが、その中に、クリシュナが森の中で歌をうたったり、笛を吹くと、それに誘われるようにゴーピーたちが集まってくるシーンがあります。英語ではマジック・フルートと訳されることもありますが、その笛の音には神秘的な力があって、それを聴くとゴーピーたちはあらゆる世事を忘れ、真実の世界に入っていくのです。

マジックフルート

この細密画は、クリシュナがヴリンダーヴァンの森の中で笛を吹くと、その音に誘われて牛たちが集まってきている絵です。皆うっとりとした表情で、クリシュナを見つめ、ヤムナー河を泳ぎ渡り、森の中から集まって来ています。ゴーピーたちだけでなく、牛や鳥など動物たちも集まって来たのですね。ブッダの教えを聞こうといろんな動物たちも我を忘れて仲良く座ったという逸話もありますが、それを彷彿とさせる絵です。

ところで、この絵を見た時、『ヨーガとヒンドゥー神秘主義』の最後に記されている著者ダスグプタの言葉を思い出しました。おおよそ20年前に公演した神性舞踏演劇『プレーマ・真の愛』の冒頭の詩人の言葉として師が一部を抜粋されたものでもありました。

もしもお前が自己放棄の喜びを味わったことがないのなら、もし最高の楽人、主クリシュナの手の中の笛になりたいとお前の心が切望したことがないのなら、もしお前があらゆるみじめさを神の一触れによって甘美なものにすることができなかったのなら、お前は何を得たといえるのだ。

この言葉は、常に私をハートの奥の消えることのない刻印に引き戻します。神の一触れによって、あらゆるみじめさは甘美な愛の中に溶け去る・・・あらゆる苦労も後悔も、努力や知識や記憶も蜃気楼のように消え去り、ただ愛だけがある!・・・クリシュナの笛の音、もしその音が聴こえて来たなら、誰もが我を忘れて引き寄せられるはず!その笛は永遠にハートの奥で吹かれているのだから、耳を澄ませればきっと聴こえてくることでしょう!

サーナンダ


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