スワーミー・アベダーナンダ

シュリー・ラーマクリシュナの弟子、スワーミー・アベダーナンダは1866年10月2日カルカッタに生まれ、カーリープラサードと名付けられました。

カーリーは幼い頃から良い成績で、18歳の時には数々の難解な書物を読破し、インドの有名な詩人たちの偉大な作品も読み終えるような知性の持ち主でした。また、その知的関心は学問に留まらず、すべての宗教に対しても向きました。ある時ヒンドゥ哲学者のインド六派哲学に関する講演に感銘を受け、ヨーガを実践したいという強い願望を持ちました。そしてヨーガの師を求めていたところ、友人の一人がシュリー・ラーマクリシュナのことを教えて会いに行くように勧めました。

21歳の時、やっとダックシネシュワルにシュリー・ラーマクリシュナを訪ねることができました。師にお会いすると少しもためらわずに、サマーディの最高境地に到達できるよう、師からヨーガを学びたい、という自らの願望を述べました。師はひと目で若者の魂の深さを見抜かれ、彼の内に潜む広大な霊的可能性にお気づきになって、たいそう喜ばれました。この日以降、カーリーは師の愛情のこもった導きのもと、真剣に霊性向上のための修行を始め、師の恩寵によってさまざまな霊的体験に恵まれました。

師の没後、出家してスワーミー・アベダーナンダの僧名でサンニャーシンとなり、出家道の正統派の伝統にしたがって放浪の生活を送るという傾向に逆らえなくなり、裸足で各地を遍歴し、あらゆる種類の欠乏と困難に耐え、あらゆる苦行を行いました。彼は一般的なヒンドゥの理念に沿って、できるだけ世俗を超越しつつ、厳しい修行と瞑想によって自らの解脱と至高のアートマンの悟りに至るために力を尽くすことを理想としていました。しかし、その頃アメリカにいたスワーミー・ヴィヴェーカーナンダは書簡を送り、彼の人生の使命は、他者に奉仕し、人に生命を与える師の思想を全世界に広めるために、喜んで一生を捧げる僧たちの新しい教団をインドに設立することである、という事実を兄弟僧たちに痛切に感じさせます。ヴィヴェーカーナンダの言葉は師の言葉であると確信して、アベダーナンダは他の兄弟僧たちとともに、彼の信念を受け入れました。

1896年、ロンドンでヴェーダーンタを説いていたヴィヴェーカーナンダの招きに応じて、かの地に赴きます。ヴィヴェーカーナンダは、「インドから到着したばかりの学識ある兄弟僧が、ロンドンのキリスト教神智学協会の次の集まりで、アドヴァイタ・ヴェーダーンタに関する講演を行う」と発表しました。しかし、そのことについてアベダーナンダは事前に相談を受けていなかったので、非常に驚き、ひどく当惑し、極端に神経質になりました。彼はそれまで、英語でもインドのどの言語でも、演壇に立って演説したことはなかったのです。彼はこの件について強く抗議しましたが、ヴィヴェーカーナンダは「私の人生のあらゆる苦難の時に、いつも強さと勇気をお与え下さった、あのお方にお任せしたまえ」と勇気をふるい起こさせる言葉で彼を励ましました。この言葉は彼を安心させ、師の限りない恩寵に頼り、講演を行い、素晴らしい成功をおさめました。このことをヴィヴェーカーナンダは手放しで喜びました。

その後、アベダーナンダはアメリカ、アラスカ、メキシコ、日本、中国、フィリピン、シンガポール、マレーシアなど各地で、師の教えを広めました。彼の魂は休むことを知らず、エネルギーの最後の一滴まで、彼と接することになった人々に霊的恩恵をもたらすために使いました。

ロンドンで一度も経験のない講演を急に行うことになった際の苦難は計り知れません。しかし師の限りない恩寵に頼り講演を成功されました。師にすべてを任せる、ゆるぎない信仰を感じさせて頂けるエピソードです。その信仰はどのようにして育むことができるでしょうか。アベダーナンダの教えを紹介します。

主に対して確固たる、ゆるぎない信仰と強い信仰心を持つことを望むのであれば、あなたはタパッスヤーつまり厳しい苦行も習慣にすべきだ。タパッスヤーとは、当てもなくあちこちをさまよい歩くことではない。その言葉が実際に意味しているのは、規則正しく変わることなくジャパや瞑想を実践し、自制心を養うことである。

強い信仰心と信念を得るために、切なる思いで主に祈れば、神はその祈りを叶えられる。だから次のように祈ることだ。「おお、主よ、喜んで私に不動の強い信仰心とゆるぎない信仰をお授けください。願わくば、私の心とハート(感じる心)は永遠にあなたの蓮華の御足に引きつけられたままでありますように、願わくば、そこから他の方角に迷い出ることのありませんように」と。

『真実の愛と勇気』P244

絵:ロンドンで講演を行うアベダーナンダとそれを見守るヴィヴェーカーナンダを想像して描きました。

サルヴァーニー


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